依存症への入口と、その先にある回復への道
「依存症」と聞くと、アルコールや違法薬物など、大人の問題を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし現在、若い世代の身近な生活の中にも、依存症への入口は数多く存在しています。
アルコール、たばこ、違法薬物だけでなく、市販薬・処方薬の過量服用、ギャンブル、オンラインゲーム、課金、SNS、買い物、そして性行動など、その対象はさまざまです。
ただし、ゲームやスマートフォンを長時間使うことや、性欲が強いことだけで依存症と決まるわけではありません。
重要なのは、自分で行動をコントロールできるか、そして学校・仕事・睡眠・健康・人間関係などに問題が生じても続けてしまうかという点です。
中々言い出せない、周りに相談しにくい「セックス依存症」とは
一般に「セックス依存症」「性依存」と呼ばれる状態は、医学的には「強迫的性行動症」として捉えられることがあります。
性行動や性的な刺激への強い衝動を繰り返し、やめようと思っても抑えられず、危険な性行為、過度なマッチングアプリの使用、動画視聴、風俗利用などを続けてしまう状態です。
その結果、性感染症、望まない妊娠、金銭問題、交際相手とのトラブル、学業・仕事への支障につながることがあります。
単に性欲が強いことや、道徳的な罪悪感があることだけを指すものではありません。
本人が苦痛を感じ、生活に明らかな問題が起きても行動を止められない場合には、専門的な評価が必要です。
依存症の入口は「楽しさ」だけではありません
依存の始まりは、必ずしも刺激や快楽を求める気持ちだけではありません。
「つらい気持ちを忘れたい」
「孤独や不安から逃れたい」
「学校や家庭に居場所がない」
「眠れない」「何も考えたくない」
「誰かに必要とされたい」
こうした苦しさを一時的に和らげるために、ゲーム、SNS、飲酒、薬物、性行動などに頼ることがあります。
最初は気分転換だったものが、次第に時間・量・回数・金額を増やさなければ満足できなくなり、「やめようと思ってもやめられない」状態へ変化していきます。
近年では、風邪薬や咳止め薬などを大量に服用する「オーバードーズ」も若者を中心に問題となっています。
市販薬だから安全とは限らず、意識障害や呼吸停止など、命に関わる危険もあります。
依存の背景に精神疾患が隠れていることも
実際の診療では、依存行動の背景に、治療が必要な精神疾患や発達特性が隠れているケースも少なくありません。
例えば、うつ病、不安症、PTSD(心的外傷後ストレス症)、不眠症などによる苦しさを紛らわせるために依存行動が始まることがあります。
ADHDでは、衝動を抑えることや行動を切り替えることの難しさが、依存のリスクに関係する場合があります。
また、双極性障害の躁状態・軽躁状態では、性行動、ギャンブル、買い物、飲酒などが急に活発になり、本人らしくない行動や大きなトラブルにつながることがあります。
そのほか、摂食障害、パーソナリティ症、強迫症などが併存している場合もあります。
反対に、依存行動が長期化することで、抑うつ、不安、不眠、イライラ、幻覚や妄想などの精神症状が現れたり、悪化したりすることもあります。
依存症だけを見るのではなく、その背景にある精神状態まで丁寧に診断することが大切です。
叱るより、苦しさに目を向ける
昼夜逆転、遅刻や欠席の増加、成績や仕事の能率低下、家族との会話の減少、金銭トラブル、うそや隠し事、急な感情の変化などは、本人が助けを必要としているサインかもしれません。
「意志が弱い」「怠けている」と責めたり、一方的にスマートフォンやお金を取り上げたりするだけでは、本人をさらに孤立させることがあります。
「どうしてそんなことをするの?」ではなく、「最近眠れている?」「何かつらいことはない?」と、依存行動の奥にある苦しさへ目を向けることが大切です。
※当院でも依存症のご相談に対応しています
当院では、アルコール、薬物、市販薬・処方薬の乱用、ギャンブル、ゲーム・ネット、性行動など、さまざまな依存症や依存的行動についてご相談を受けています。
依存行動だけを止めるのではなく、うつ病、不安症、双極性障害、ADHD、PTSD、不眠症などの背景疾患や、学校・職場・家庭環境についても確認し、その方に合った治療と支援を一緒に考えていきます。
ご本人が受診をためらっている場合には、まずご家族からご相談いただくことも可能です。
依存症は、本人の意志や性格だけの問題ではありません。
適切な治療と支援によって、回復を目指すことができる病気です。
依存症への入口が身近にある一方で、回復への入口も必ずあります。
「まだ大丈夫」と抱え込まず、小さな変化に気づいた段階で相談することが、若者の命と未来を守る大切な一歩です。
