「ただのお酒好き」が、いつの間にか依存症に変わることも
「仕事終わりの一杯が何より楽しみ」
「ストレスがたまると、お酒を飲まずにはいられない」
「最近、以前よりお酒の量が増えている」
「今日は飲まないと決めても、結局飲んでしまう」
このような経験はありませんか?
お酒は、仕事終わりの楽しみや人付き合いの一部として、日常生活に身近な存在です。
しかし、その身近さゆえに、気づかないうちに飲酒量が増え、自分の意思ではコントロールできない状態に陥ることがあります。
アルコール依存症は、単なる飲みすぎや意思の弱さではなく、脳の働きに変化が生じ、飲酒をコントロールすることが難しくなる精神疾患です。
今回は、アルコール依存症の恐ろしさと原因、脳や身体への影響、うつ病・不安障害との関係、治療方法について詳しく解説します。
アルコール依存症とは?飲酒をコントロールできなくなる病気
アルコール依存症は、お酒を飲みたいという欲求が強くなり、健康や生活に問題が生じていても飲酒を続けてしまう病気です。
最初は「少し気分転換したい」という飲酒だったものが、次第に習慣化し、お酒がないと落ち着かなくなる場合があります。
特徴的なのは、飲酒量だけでなく、自分で決めた量や時間を守れなくなることです。
「一杯だけのつもりが、何杯も飲んでしまう」「明日は飲まないと決めても守れない」といった状態が繰り返される場合は注意が必要です。
また、酔って暴れる人だけが依存症になるわけではありません。
普段は仕事をこなし、家族との生活を送っている方でも、依存症を抱えている場合があります。
なぜお酒がやめられなくなるのか?依存が進む3つの仕組み
① 脳の報酬系への影響
アルコールは、脳の報酬系と呼ばれる仕組みに作用し、快感や安心感に関連する働きに影響します。
飲酒によって一時的に緊張が和らぐと、脳は「お酒を飲むと楽になる」という経験を学習します。
この状態を繰り返すことで、ストレスや不安を感じたときに飲酒を求める行動が強まることがあります。
② 耐性によって飲酒量が増える
飲酒を続けていると、以前と同じ量では酔いを感じにくくなる「耐性」が生じる場合があります。
その結果、同じ効果を求めて飲酒量が増加し、身体への負担も大きくなります。
「昔よりお酒に強くなった」と感じていても、それが健康な状態を意味するわけではありません。
③ 飲まないとつらくなる身体依存
依存が進行すると、お酒を飲まないと手が震える、汗をかく、眠れない、不安になるなどの「離脱症状」が現れる場合があります。
こうした不快な症状を和らげようとして再び飲酒し、依存がさらに強まる悪循環が生じます。
アルコール依存症の恐怖①|肝臓だけではない全身への影響
長期間の過度な飲酒は、肝臓だけでなく、脳、心臓、膵臓、消化管など全身に影響することがあります。
肝臓では、脂肪肝、アルコール関連肝炎、肝硬変などが生じる場合があります。
また、膵炎、高血圧、不整脈、心筋症、末梢神経障害などのリスクも高まります。
特に注意したいのが、がんとの関係です。
WHOは、飲酒が口腔・咽頭・喉頭、食道、肝臓、大腸、乳房などのがんの発症に関係するとしています。
がんのリスクは少量の飲酒でも完全になくなるわけではありません。
健康診断で肝機能の数値に大きな異常がなくても、飲酒による健康への影響がないとは限らないのです。
アルコール依存症の恐怖②|脳や記憶力への影響
アルコールは中枢神経に作用する物質であり、長期間の大量飲酒は認知機能にも影響する場合があります。
記憶力や集中力、判断力が低下したり、感情を調整しにくくなったりすることがあります。
また、栄養不足、特にビタミンB1の不足によって、ウェルニッケ脳症やコルサコフ症候群などの重い神経障害を引き起こす場合もあります。
「最近、物忘れが増えた」「以前より仕事のミスが多い」という変化がある場合、飲酒だけでなく、睡眠や身体疾患なども含めた評価が重要です。

アルコール依存症の恐怖③|うつ病・不安障害・睡眠障害との関係
「不安を忘れるために飲む」「眠れないから寝酒をする」
このような飲酒習慣には注意が必要です。
アルコールには一時的に緊張を和らげる作用がありますが、その効果が切れると不安が強くなることがあります。
また、寝酒は寝つきを良くしたように感じても、夜間の睡眠を浅くし、中途覚醒や早朝覚醒につながる場合があります。
飲酒問題とうつ病、不安障害、不眠症は併存することがあり、互いの症状を悪化させる可能性があります。
さらに、アルコールの影響による判断力の低下や衝動性の増加は、自傷や自殺、事故などの危険にも関係します。
精神疾患を抱える方がお酒で症状を紛らわせようとしている場合は、飲酒の問題と精神症状の両方に対する治療が大切です。
アルコール依存症の恐怖④|突然お酒をやめることにも危険がある
アルコール依存症が進行した方では、飲酒を急に中断すると、離脱症状が現れることがあります。
代表的な症状には、手の震え、発汗、動悸、吐き気、不眠、不安などがあります。
重症の場合には、けいれん、幻覚、意識の混乱、振戦せん妄など、命に関わる状態に進行することもあります。
そのため、長期間大量に飲酒している方や、過去に離脱症状を経験した方は、自己判断で急に断酒せず、医師に相談してください。
意識障害やけいれん、強い混乱などが現れた場合は、救急医療による対応が必要です。
アルコール依存症の恐怖⑤|仕事・家庭・人間関係への影響
アルコール依存症の影響は、健康問題だけではありません。
飲酒による遅刻や欠勤、仕事上のミス、金銭問題、家族との対立など、社会生活にも影響する場合があります。
家族から飲酒を控えるように言われても、本人が「いつでもやめられる」と考え、問題を十分に認識できないケースもあります。
しかし、飲酒をコントロールできなくなる状態は、単純な説得や叱責だけで改善できるものではありません。
本人だけでなく、ご家族が専門機関に相談し、適切な支援につながることも重要です。
世界の統計が示すアルコールの深刻な健康被害
WHOが2024年に公表した報告によると、2019年には世界で推計約260万人の死亡に飲酒が関係していました。
また、世界の15歳以上の人口のうち、約4億人がアルコール使用障害、約2億900万人がアルコール依存症の状態にあったと推計されています。
これらは世界規模の推計値であり、日本の患者数や死亡者数を示すものではありません。
しかし、アルコールによる問題が個人の生活習慣にとどまらず、世界的な健康課題であることを示しています。
自分は大丈夫?見逃したくないアルコール依存症のサイン
次のような変化がある場合、飲酒習慣を見直す必要があるかもしれません。
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お酒を飲む量や頻度が増えている
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飲み始めると予定より多く飲んでしまう
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飲まない日を作ろうとしても続かない
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お酒がないと落ち着かない
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飲酒のために仕事や家庭の予定を後回しにする
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健康への影響を指摘されても飲み続けている
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朝から飲酒したり、隠れて飲んだりする
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飲まないと手の震えや強い不安が出る
これらは診断の目安となるサインですが、当てはまる数だけでアルコール依存症と決まるわけではありません。
医療機関では、飲酒量や生活への影響を確認し、必要に応じてAUDITなどの質問票を用いて評価します。

アルコール依存症は治療できる?回復に向けた治療方法
アルコール依存症は、適切な治療や継続的な支援によって回復を目指せる病気です。
① 断酒・減酒の目標設定
依存症の程度や身体の状態によって、治療目標を検討します。
重度のアルコール依存症では、断酒が基本的な治療目標となります。
一方、治療につながる最初の段階では、飲酒量を減らすことから支援を始める場合もあります。
ただし、身体依存がある方では減酒自体にも離脱症状の危険があるため、医学的な管理が必要です。
② 薬物療法
治療では、飲酒欲求を軽減する薬や、断酒を補助する薬、飲酒を避けるための抗酒薬などが検討される場合があります。
薬の種類や使用条件、副作用は異なり、肝機能や既往歴などを確認したうえで医師が判断します。
③ 心理療法と再発予防
飲酒につながるストレスや生活習慣を整理し、飲みたくなったときの対処方法を身につけることも重要です。
認知行動療法などの心理的支援や、動機づけ面接、再発予防プログラムなどが役立つ場合があります。
④ 家族・自助グループによる支援
断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)などの自助グループは、同じ悩みを持つ人と経験を共有し、回復を継続するための支えとなります。
再飲酒があった場合も、治療を諦めるのではなく、原因を振り返り、支援を受けながら計画を見直すことが大切です。
ご家族がアルコール依存症を疑ったときは
身近な人の飲酒に悩んでいる場合、本人を強く責めたり、無理やりお酒を取り上げたりするだけでは解決が難しいことがあります。
まずは飲酒によって生じている問題を整理し、本人が落ち着いている時間に相談を促すことが大切です。
また、暴力や威圧的な行動がある場合には、ご家族自身の安全を優先してください。
本人が受診を拒否していても、ご家族だけで精神保健福祉センターや依存症専門の相談窓口に相談することができます。
港区でアルコール依存症のご相談は当院へ
「最近、お酒の量が増えている」
「やめたいと思っても、飲酒を繰り返してしまう」
「飲まないと眠れない、不安になる」
「家族から飲酒について心配されている」
このような状態が続いている方は、専門家への相談をご検討ください。
Family Total Healthcare Clinic AZABUでは、アルコール依存症をはじめ、うつ病、不安障害、睡眠障害などについて、患者さまの症状や生活背景を踏まえた診療を大切にしています。
飲酒状況、心身の状態、生活への影響を確認し、必要に応じて薬物療法や生活習慣の調整、依存症専門医療機関との連携などを検討します。
当院では外来診療を基本としていますが、重い離脱症状や入院管理が必要な場合には、専門医療機関での治療が必要です。
港区麻布・麻布十番、六本木周辺などから精神科・心療内科をお探しの方も、ご相談ください。
アルコール依存症の本当の恐ろしさは、本人も気づかないうちに、飲酒が生活の中心になってしまうことです。
しかし、飲酒の問題に気づき、適切な治療や支援につながることで、生活を立て直していくことは可能です。
一人で解決しようとせず、早い段階から相談することが大切です。
