「うつ病の症状は良くなったのに、夜だけ眠れない」「不安や気分の落ち込みは改善したのに、何度も目が覚める」「精神的には元気になったはずなのに、睡眠薬が手放せない」

このようなお悩みを抱える方は少なくありません。
実は、不眠はうつ病や不安障害、適応障害などに伴って現れるだけでなく、精神疾患が改善した後も、睡眠の問題だけが根強く残ることがあります。
その背景には、脳の覚醒状態や生活習慣、睡眠への不安など、複数の要因が関係しています。
今回は、精神疾患の回復後にも睡眠障害が続く理由を、医学的な研究データとともに解説します。
うつ病が改善しても約7割に睡眠の問題が残った研究
米国で行われた大規模なうつ病治療研究「STAR*D」では、抗うつ薬による治療で寛解に至った943人を解析したところ、71.7%に何らかの睡眠関連症状が残っていたと報告されています。
特に、54.9%には夜中に目が覚める「中途覚醒」が認められました。
この数値には軽度の症状も含まれており、すべての患者さまに当てはまるものではありません。
しかし、気分の落ち込みが改善したことと、睡眠の問題が完全に解消することは、必ずしも一致しないと考えられます。
なぜ睡眠障害だけが長引くのか?5つの理由
① 脳の覚醒状態が続いている
不眠症では、身体は疲れていても、脳の覚醒を維持する働きが高まった状態が続くことがあります。
これは「過覚醒(ハイパーアラウザル)」と呼ばれます。
うつ病や不安症による精神的な緊張が和らいでも、夜間に頭が冴える状態が残り、寝つきの悪さや中途覚醒につながる場合があります。
② 「眠れないことへの不安」が習慣化する
不眠が長期間続くと、「今夜も眠れなかったらどうしよう」「明日の仕事に影響するかもしれない」と、眠ること自体に不安を感じる場合があります。
その結果、ベッドに入ると緊張が高まり、ますます眠れなくなる悪循環が生じます。
これは不眠症の慢性化に関係する「条件づけられた覚醒」と呼ばれる仕組みです。
③ 生活リズムや体内時計の乱れが残る
精神的な不調が続いていた時期に、昼夜逆転や長時間の昼寝、不規則な起床時間などが習慣化している場合があります。
うつ病などの症状が改善しても、睡眠・覚醒リズムがすぐに元へ戻るとは限りません。
特に、朝起きられない、夜になると目が冴えるといった状態では、体内時計の調整が必要になることがあります。
④ 睡眠障害そのものが独立した病気になっている
以前は、うつ病や不安症に伴う不眠を「二次的な症状」として捉えることが一般的でした。
しかし現在は、不眠がほかの病気と併存しながら、独自の仕組みで持続する場合があると考えられています。
原因となった精神的なストレスが改善しても、睡眠障害そのものに対する治療が必要になることがあります。
⑤ 薬の影響や別の病気が関係している
一部の抗うつ薬などでは、副作用として不眠や眠気が生じる場合があります。
また、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、慢性的な痛み、身体疾患などが睡眠を妨げている可能性もあります。
うつ病の再燃や、不安症状が十分に改善していない場合もあるため、服薬状況や身体の状態を含めた評価が重要です。

不眠が続くと、うつ病の再発にも影響する?
不眠は精神疾患に伴う症状であると同時に、その後のメンタルヘルスにも影響することが知られています。
21研究を統合したメタ解析では、不眠のある方は、ない方に比べて、その後うつ病を発症するオッズが約2.1倍でした。
これは主に、うつ病ではなかった人の新規発症を調べた研究であり、治療後の再発率を示すものではありません。
一方、うつ病の残存不眠と再発の関係については研究結果が一様ではなく、今後も検討が必要です。
ただし、不眠が続けば日中の疲労感、集中力低下、気分の不安定さにつながる場合があるため、睡眠の問題にも適切に対応することが大切です。
長引く不眠症はどう治療する?
慢性不眠症の治療では、原因を確認したうえで、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)や薬物療法などを検討します。
CBT-Iは、睡眠に関する考え方や行動習慣を見直し、眠りを妨げる悪循環の改善を目指す治療法です。
37研究を統合したメタ解析では、ほかの精神疾患や身体疾患を併存する不眠症の患者において、CBT-Iを受けた方の36.0%が不眠症の寛解に至り、比較対象群では16.9%でした。
また、東京大学の研究グループによる解析では、CBT-Iが不眠症状だけでなく、併存する抑うつ症状の改善にも役立つことが示されています。
薬物療法では、症状や年齢、併存疾患、現在の服薬状況などを考慮して、睡眠薬の種類や必要性を判断します。
眠薬を自己判断で増減・中止せず、主治医と相談しながら治療を進めることが重要です。
こんな睡眠の悩みが続く場合はご相談ください
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うつ病や不安障害が改善したのに眠れない
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夜中に何度も目が覚める
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朝早く目が覚め、その後眠れない
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睡眠薬を服用していても熟睡感がない
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眠れないことへの不安が強い
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日中の眠気や疲労で仕事・生活に支障がある
こうした状態が続く場合には、睡眠障害そのものの評価が必要かもしれません。

港区麻布・麻布十番で睡眠障害・不眠症のご相談は当院へ
Family Total Healthcare Clinic AZABUでは、不眠症、睡眠障害、うつ病、不安障害、適応障害、双極性障害などについて、患者さまの症状や生活背景を踏まえた診療を大切にしています。
精神疾患の症状が改善した後も、寝つきの悪さ、中途覚醒、早朝覚醒などが続いている方は、お気軽にご相談ください。
睡眠の状態やこれまでの治療経過を確認し、必要に応じて治療方法の見直しや専門医療機関との連携を検討します。
港区麻布・麻布十番、六本木周辺をはじめ、新宿・池袋・上野などから精神科・心療内科をお探しの方も、ご相談をお待ちしております。
「心の症状が良くなったのだから、眠れないのは仕方がない」と考える必要はありません。
睡眠の問題には、睡眠そのものに着目した治療が役立つ場合があります。
心の回復と同じように、睡眠の回復も大切にしていきましょう。